令和8年度診療報酬改定で「通院・在宅精神療法」の施設基準が厳しくなりました。その内容をみると病院でなければ対応できない取り組みが多く、一般内科と心療内科が密に連携していても、小規模な診療所にできることは限られているように見えます。では、国が進める「精神科救急医療体制整備事業」のなかに、心療内科を併設する小規模な内科診療所でも参画できる事業はあるのでしょうか。本稿では、同事業の実施要綱をもとに整理します。
■「精神科救急医療体制整備事業」の目的と構成
令和4年3月30日に厚生労働省社会・援護局から全国の都道府県知事等あてに発出された一部改正「精神科救急医療体制整備事業」(以下、同事業)実施要綱では、緊急な医療を必要とする全ての精神障害者等が迅速かつ適正な医療を受けられるよう、「都道府県又は指定都市が精神科救急医療体制を確保する」ことを目的とすると定められています。
同事業は、(1)精神科救急医療体制連絡調整委員会等(2)精神科救急情報センター(3)搬送体制(4)精神科救急医療確保事業(5)身体合併症救急医療確保事業―で構成されています。このうち小規模診療所が参画できる可能性があるのは、(4)の精神科救急医療確保事業です。
■精神病床を持たない診療所の「施設指定」は考えにくい
(4)については、「緊急な医療を必要とする全ての精神障害者等に対し医療の提供ができる体制を整えるものとし、入院を必要とする場合には入院させることができるように空床を確保する」としたうえで、「都道府県知事または指定都市市長は、地域の実情に応じて本事業が実施可能な医療機関の中から、精神科救急医療施設として指定し、実施することとする」と定めています。この文言からすると、精神病床を持たない小規模診療所が精神科救急医療施設として指定されるケースは考えにくいといえます。
■注目すべきは「外来対応施設」
ただし、同じ文の最後に「さらに圏域において外来診療による初期精神科救急患者への対応を行うための体制が充分ではない場合においては、外来対応施設を設置することが望ましい」との一文が加えられている点は見逃せません。つまり厚生労働省は、「精神科救急医療確保」事業を円滑に進めるためには、病院群輪番型・常時対応型の「精神科救急医療施設」に加え、初期精神科患者に対応する「外来対応施設」(以下、同施設)も欠かせないと考えているのです。
同施設は「診療所にあっては、精神病床を有する医療機関との連携により体制確保」を担うもので、「外来対応施設のうち夜間、休日、全時間帯を同一の医療機関において対応する体制を整えている場合は、“常時型外来対応施設”として指定するもの」とされていることから、“常時型”は中小規模の精神病院や有床診療所を想定しているとみられます。一方、“常時型”ではない外来対応施設は、無床の精神科・心療内科機能を持つ診療所が想定されていると考えられます。心療内科を併設する小規模な内科診療所にとっては、この外来対応施設が同事業へ参画する現実的な入り口といえるでしょう。
(2026年7月24日時点での情報に基づき作成)


