2027年度予算の概算要求基準が7月30日に閣議決定されたことを受け、各省庁は8月末の概算要求に向けた検討・調整に入った。厚生労働省関係では「骨太の方針2026」に明記された病院の建て替え支援がどのような形で事業化されるのか、注目される。
物価や人件費の高騰により、病院経営は危機に瀕している。建築資材の高騰も続き、病院が新築や増改築のための費用を自前で調達するのは極めて困難な状況にある。
40年ごろに向けて85歳以上人口の増加と生産年齢人口の減少は加速する。増加し続ける医療・介護ニーズを抱える高齢者を今よりも少ない医療従事者で支えるには、医療機関の連携・再編・集約化による医療提供体制の再構築が不可欠であり、都道府県は2028年度までに新たな地域医療構想を策定することになっている。
その大きな柱となるのが、急性期拠点機能を担う病院への高度な救急医療や手術の集約化だ。災害医療や新興感染症への対応においても中核的役割を果たすことを想定しており、26年度から始まる医療機関機能報告で各病院が報告した40年に担う予定の機能や診療実績データを参考に地域医療構想調整会議で協議を重ね、人口20〜30万人に1カ所を目安に確保する。
急性期拠点機能に関する協議では建物・経営の状況も考慮
この際の考え方について厚生労働省が7月3日に公表した「地域医療構想ガイドライン」は、診療実績から急性期拠点機能を担うことが想定される医療機関であっても、建物が老朽化している場合や経営状態が悪い場合があり、こうした医療機関を選定すると将来的に地域の医療提供体制全体に費やすコストの増大を招く恐れがあると指摘。
対応策としては「急性期に係る診療実績は相対的に低いものの、建て替えが当面必要ない病院が存在する場合には、その他の医療機関が急性期拠点機能を担うことも考えられる」とし、診療実績データを基本としつつも、政策医療の実施状況や経営状況、建物の状況も含めた総合的な視点での協議を促している。
こうした新たな地域医療構想の方向性や病院経営の窮状などを踏まえ、「骨太の方針2026」には、「新たな地域医療構想の下、将来需要を踏まえ、老朽化・災害対策を含む地域に不可欠な施設・設備の計画的な整備への必要な支援の在り方を検討する」と書き込まれた。
病床数適正化の流れを止めないよう支援対象は絞り込みの可能性も
新たな地域医療構想では急性期医療の集約化だけでなく、医療需要の縮小に合わせた病床数の適正化にも取り組む。厚労省の機械的試算による40年の総病床数は106.9万床で、25年度病床機能報告結果の116.4万床から9.5万床の削減を見込む。
27年度予算による支援事業の具体的内容は8月末の概算要求の公表を待たねばならないが、骨太の方針の書きぶりからも、支援対象は病床数適正化の流れに逆行することのないよう、老朽化した病院の中でも救急医療や周産期医療、災害医療などを担う病院を中心にある程度絞り込まれる可能性がある。
なお、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会の民間病院3団体は7月8日に上野賢一郎厚労相に提出した緊急要望書で、新たな地域医療構想で地域に必要な医療機能を担うと位置付けられた病院や医療計画の5疾病6事業をはじめとする政策医療を担う病院などを対象に、民間病院の増改築費用を支援する仕組みの創設を求めている。