「骨太の方針2026」から読み解く医療機関経営の方向性

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政府が毎年公表する「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」は、今後の医療政策や診療報酬改定の方向を示す重要な政策文書です。令和8(2026)年7月21日に公表された「骨太の方針2026」は、人口減少と超高齢社会を見据え、「成長型経済に合わせた持続可能な社会保障制度」と「攻めの予防医療」を大きな柱に据えました。
■成長型経済に合わせた持続可能な社会保障制度
今回の骨太の方針は、社会保障制度を持続可能にするため、医療・介護・障害福祉分野での生産性向上を重要な政策課題に位置付けています。その中核となるのが、医療DXとAX(AIトランスフォーメーション)の活用、そして多職種連携によるチーム医療の推進です。デジタル技術で業務を効率化し、限られた人材でも質の高い医療・介護サービスを提供できる体制を整えることが求められています。
また、医療機関の経営情報の「見える化」を進めて経営の実態を把握したうえで、物価や賃金の変動に対応しながら、経営の安定と医療従事者の処遇改善を図る方針も示されました。
さらに、経済・物価の動向が2026年度診療報酬改定の時点での見通しから大きく外れ、医療機関等の経営に支障が生じた場合には、令和9年度予算の編成過程で、診療報酬上の加減算を含む必要な調整を追加で行うことも明記されています。
2040年を見据えた医療提供体制の見直しも大きなテーマです。病床数の適正化を進めるとともに、新たな地域医療構想のもとで医療機関の連携・再編・集約化を進め、地域包括ケアシステムをさらに深めていく方針が示されました。
あわせて、かかりつけ医機能の充実、訪問看護、救急医療、小児・周産期医療、看取りなど、地域の実情に合った医療提供体制の整備も進められます。
つまり医療機関には、「自院だけで完結する医療」から「地域全体で患者を支える医療」へと、役割を広げていくことが求められているのです。
医療DXについても、電子カルテ・電子処方箋の普及、医療・介護情報の連携、PHRの活用、医療情報の二次利用、サイバーセキュリティ対策など、医療情報基盤の整備をさらに進める方針が打ち出されました。医療DXは単なるデジタル化ではなく、生産性の向上と質の高い医療提供を実現するための土台と位置付けられています。
医療保険制度では、70歳以上の高齢者の医療費負担の見直し、OTC類似薬の保険給付の在り方、バイオ後続品の普及促進、リフィル処方箋や地域フォーミュラリの活用など、医療費の適正化に向けた取り組みも引き続き進めることが示されています。

■攻めの予防医療と疾病対策
もう一つの大きな柱が「攻めの予防医療」です。これまでの医療は、病気になってから治療することが中心でした。今後は健康寿命の延伸とWell-beingの向上を目指し、健康増進、疾病予防、早期発見、早期介入に加えて、行動変容を促す取り組みを強化する方針が示されています。
具体的には、健康リテラシーの向上、生活習慣病対策、がん検診や歯科健診の受診率向上、認知症の早期診断・早期対応、リハビリテーションの充実、PHRの活用など、幅広い施策が盛り込まれています。
さらに、更年期世代の女性への支援やプレコンセプションケア、健康経営の推進など、医療機関だけでなく地域や企業とも連携しながら健康づくりを進める方向性も示されました。
これからは「病気を治す医療」にとどまらず、「病気を予防し、健康を維持する医療」へと役割が広がっていくことになります。

■まとめ
骨太の方針2026から読み取れるキーワードは、「持続可能性」と「予防」の2つです。人口が減っていくなかで、医療機関には限られた人材で質の高い医療を提供するための生産性向上が求められています。その手段として、医療DXやAI、多職種連携、地域医療構想に基づく医療機関同士の連携が位置付けられています。
一方で、「攻めの予防医療」の推進によって、医療機関の役割も大きく変わります。病気を治療するだけでなく、生活習慣病の予防や健康づくり、健康寿命の延伸を支えることが、これからの重要な使命になります。
つまり、これからの医療機関経営には、「診療を提供する医療機関」から「地域住民の健康を支える医療機関」への転換が求められているのです。
(MICTコンサルティング株式会社 大西 大輔)
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