日本対がん協会はこのほど「がん患者・家族の生成AI利用状況に関する調査報告」の結果を公表した。調査からは、生成AIには利便性の面で、医療従事者には信頼性や専門性の面で、それぞれの強みに期待して使い分けがされていることがうかがえた。一方で、生成AIはがん患者・家族にとって有用な情報源となる可能性があるものの、活用にあたっては情報の正確性や信頼性に十分な注意が必要であることが示された。
生成AIの利用が急速に拡大している。一方、現状では生成AIには誤情報や情報の偏りといった課題がある。
協会の無料電話相談「がん相談ホットライン」に寄せられた声からはこうした特性を認識せずに病状に関する悩み相談などで生成AIを利用するがん患者・家族が少なからずいることがわかったことから、がん患者・家族の生成AIの利用実態を明らかにし、正しい認識のもとで適切に生成AIを利用したり、信頼できる情報源・相談先へのアクセスを支援することなどを目的に調査を行った。
調査は、2026年3月23-26日に全国の15-89歳のがん患者や家族約1万人にインターネットを通じて行った。その中で、直近1年以内にがん治療を受けている患者と家族でAIを利用している対象者計427人には、質問を追加して利用方法を調べた。結果の概要は次のとおり。
「がん患者・家族はどのような情報源・相談機関を認知しているか」については、生成AIの利用率は、がん患者本人6.7%、家族7.5%、30歳代で最も高い結果となった。生成AIの認知率は本人が36.7%、家族が44.6%で、60歳代以下で高かった。医療従事者への相談は本人が47.1%、家族が42%となっていた。生成AIの利用頻度を巡っては、がん患者本人は「2-3カ月に1回以下」が最も高く24.9%で、平均利用回数は1.3回/週だった。がん患者家族でも「2-3カ月に1回以下」が最も高く23.8%で、平均利用回数は1.5回/週だった。
生成AIに相談する内容は、がん患者本人は「がん治療に関する情報」が最も高く62.9%だった。次いで「症状・副作用・後遺症のこと」が60.6%だった。がん患者本人は「症状・副作用・後遺症のこと」が家族よりも8.7ポイント高くなっていた。
生成AIを利用する理由については、がん患者本人は「すぐに調べられる/相談できるため」が最も高く62.2%、「無料で利用できるため」55.3%、「好きな時に利用できるため」、「人に聞きにくいことも気軽に質問・相談できるため」がそれぞれ49.6%と、上位には利便性に関連する理由が並んだ。家族も同様の傾向だった。一方、利用しない理由は「医学的に信頼できる情報か不安」、「医療機関の説明と異なる情報が含まれる可能性がある」など、正確性・信頼性に関連する理由への回答が多かった。
直近1年以内にがん治療を受けたがん患者と家族で生成AIを利用する対象者に行った追加質問では「生成AIの情報が誤っている」と感じた経験率は66.2%だった。
中でも「数回ある」が37.6%、「何度もある」が23.9%と、過半数を占める結果となった。生成AIの情報が誤っていると感じた理由について自由回答で尋ねたところ、「質問の仕方を変えると異なる回答が返ってきた」、「生成AIからのアドバイスを試した結果、うまくいかないこともあった」といった声が寄せられた。
生成AIによる行動変容では、「病気や治療についての理解が深まった」が、がん患者・家族とも4割程度、「受診や相談の際の事前準備がしやすくなった」が3割程度で、計7割の患者・家族がポジティブな行動変容ととらえる実態もわかった。自由回答では、「人に相談しづらかったことを調べて不安が和らいだ」、「主治医に対する会話・質問がしやすくなった」など前向きな声が寄せられた。
一方で、「知識が増えて逆に混乱した」、「医師との話と逆で不安になった」といった声もみられ、生成AIの活用には、利便性とともに、情報の正確性や信頼性に対する懸念もあることがうかがえた。
また、がん患者本人の利用状況を治療期間別で確認すると、今回の調査では「初診」「再発」のがんの区分けはしていないものの、3カ月未満のがん患者本人の利用率が高く、治療期間が短いほど利用率が高くなる傾向がみられた。診断直後や治療初期の「わからないことが多い」段階で、生成AIが利用されやすい可能性が示唆された。
(『病院新聞』2026年7月23日)
※この記事に資料はありません。
(資料公表日 2026-06-18/MC plus Daily)