厚生労働省は2026年度、ICT機器等の導入を通じた業務効率化・職場環境改善を支援する補助事業を実施する。対象は病院に限定されており、補助上限は1施設あたり8,000万円。申請の期限は7月下旬ごろとなる見込みだ。
■申請要件は?
●採否を左右するのは「業務効率化計画」の内容か
厚労省は25年度補正予算で、「医療分野における業務効率化・職場環境改善支援事業」に200億円を確保していた。この補助事業に申請できるのは、保険医療機関コードが発行されており、26年4月1日から申請時点までに診療報酬請求の実績がある病院に限られる(ハンセン病療養所、防衛医科大学校病院など一部の国立医療機関は対象外)。申請要件として、▽業務効率化計画の作成▽厚労大臣への報告▽業務効率化に関するデータの提出▽ベースアップ評価料の届出(26年4月1日時点)▽地域医療への貢献等―の5項目がある。
申請した全病院が採択されるわけではなく、厚労省が都道府県ごとの所要見込額を定め、その範囲内で各病院の計画内容等を踏まえて選定を行う。補助対象は全国で375病院程度が想定されている。すでに都道府県では意向調査を実施しているが、その回答をもって補助対象とはならず、調査に未回答または利用意向がなかった場合は原則として対象外とする都道府県もある。
選定にあたり、申請の5要件を中心に15項目の評価基準が設けられている(図表1)。▽事業の背景・目的等を適切に理解しているか▽補助を受けて業務効率化に取り組むのに十分な体制を有しているか▽これまで独自に院内の業務効率化・勤務環境改善に取り組んできた実績があるか―など、前提条件に近い項目も含まれる。
5要件のうち、ベースアップ評価料の届出と地域医療への貢献等は実績として必須となるもので、後者については、医療計画に位置付けられた病院に限定されないが、地域医療構想において急性期機能が過剰な地域で都道府県の機能移行の要請に応じない場合などは対象外となる。
厚労大臣への報告とデータ提出は、後述のように採択後の義務と料の届出と地域医療への貢献等は実績として必須となるもので、後者については、医療計画に位置付けられた病院に限定されないが、地域医療構想において急性期機能が過剰な地域で都道府県の機能移行の要請に応じない場合などは対象外となる。
厚労大臣への報告とデータ提出は、後述のように採択後の義務となるもので、後者については「提出に十分な体制を有しているか」を確認するとしている。
ベースアップ評価料の届出と地域医療への貢献等を除く項目は、A~Dの4段階で評価が行われる。
申請・選定において重要になるのは業務効率化計画の作成といえる。計画は最大3年間を対象とし、▽組織▽対象部門▽具体的・定量的な効率化目標▽業務手順の見直し、タスク・シフト/シェアの具体的内容▽ランニングコストの確保―の5項目で、各年における具体的な取組内容を記載する必要がある。
このうち、「組織」では、院長、副院長等の管理者が委員長となる「業務効率化推進委員会」を設け、経営者層が業務効率化のPDCAを主導して進めることが求められる(当該委員会の体制や運用が記載された書面を提出)。PDCAについては、特に評価と見直しの仕組みを必ず設けなければならない。
評価基準では、課題の定量的把握、取組内容の発展性や波及効果、効率化目標の意欲の度合いや合理的根拠、タスク・シフト/シェアとICT導入との関連性などが確認される。
■補助内容は?
●対象のICT機器等は幅広く、外部専門家の費用も可
補助対象は、26年度中に生じる業務効率化に資するICT機器等の導入とそれに附随する費用。対象経費の5分の4(国3分の2、都道府県3分の1の負担)を上限とし、1施設あたりの上限は8,000万円となる。
補助対象のICT機器等は幅広い。スマートフォンや業務用インカム、患者の見守り支援機器、生成AIを活用した文書自動作成支援サービス、薬剤・検体搬送ロボット、マセレーター、薬剤自動分包機のほか、医事・給食・清掃部門等の業務効率化に資するICT機器等も対象となる。設置・訓練・効果測定費用や改修費用(Wi-Fi整備費・電子カルテ連携費含む)も含まれ、外部専門家による支援も認められるが、導入費用と比べて過大とならない範囲に限られる。
一方、ICT機器等のランニングコスト(運用・保守費用等)、電子カルテ本体の導入更改費用、施設整備費用(休憩室・院内保育所等)は補助対象外となる。ソフトウェア利用料は26年4月~27年3月の最大12カ月分のみが対象で、27年度以降は対象にならない。
■注意点は?
●評価と返還リスク、補助継続には不確実性も
採択された病院は、業務効率化計画の節目(1年目終了時、2~3年目途中、3年目終了時)に提出する「報告書」で、厚労省の評価を受ける。評価の結果、成果が認められなかった場合は補助金の返還を求められることがある。もちろん、不正な手段での支給は全額返還となる。なお、計画に記載した2年目・3年目の対象経費への補助は保証されているわけではないので、計画の作成には慎重さが求められる。
別途定められるデータを提出する必要もある(図表2)。ICT導入前後の業務時間、関係職員の総労働時間・超過勤務時間、インシデント件数などが想定されており、計測・提出方法の詳細は今後示される。
申請受け付けは6月に始まり、7月下旬ごろが申請期限となる見込み。申請内容や業務効率化計画による選定作業を経て、採択病院が決まるのは8月上旬以降とされている。
採択病院は、その取組内容や成果が厚労省から公表される。また、導入ICT機器等の製品名・価格等の情報提出を求められ、その際に病院名が公表される可能性もある点にも留意しておきたい。