夜勤に対する労働安全と処遇改善を要望 [日本看護協会]

医療機関の命運を握る看護戦略-選ばれなければ淘汰へ

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公益社団法人日本看護協会(東京都渋谷区、秋山智弥会長)は看護職員の働く環境整備が不可欠として、厚生労働省労働基準局に対して要望を行った。同協会の淺香えみ子常任理事は、人材確保に欠かせない労働安全と処遇改善の2つの視点について説明した。

■メンタルヘルスの不調を抱えるリスクが高い
日本看護協会の秋山会長は3月5日、厚生労働省労働基準局の岸本武史労働基準局長に対し、「2027(令和9)年度予算・政策に関する要望書」を提出した。
同協会の淺香常任理事は、「少子高齢化が進展し生産年齢人口が減少する中、看護師の必要数を確保するためには、職務に応じた処遇改善とともに、安心安全でやりがいを持って働き続けることができる環境整備が、医療提供体制の維持のためにも絶対条件です。特に、労働負荷が高い夜勤・交代制勤務において、勤務間インターバル制度の義務化や夜勤時間に応じた法定労働時間の削減を強く求めています。こうした環境整備が整わないと、他産業へ流出が加速し、医療の質の低下にもつながりかねないと危惧しています」と労働安全の視点を説明する。
1日の勤務終了後、翌日の出社までの間、一定時間以上の休息時間を設け、生活・睡眠時間を確保する勤務間インターバル制度は、2019年に法律により企業の努力義務となった。また、2025年までに、勤務間インターバル制度を導入している企業割合を15%以上とするという数値目標も定められている。
しかし、厚労省によると、2交代制夜勤16時間未満の方の41.9%、2交代制夜勤16時間以上の方の40.3%が勤務間インターバルの時間が11時間以下という調査結果もあり、看護職員の勤務間インターバルは十分に確保できているとは言い難い。
また、夜勤・交代制勤務の健康リスクも指摘されており、身体的影響としては心血管系疾患の発症リスクが1.15倍であったり、乳がん・前立腺がん等の悪性腫瘍、うつ病、認知症の発症リスクが高くなるなどがあるほか、精神的影響としては睡眠障害にり患するリスクが高い、ストレス解消に必要なレム睡眠を十分にとることが困難となりメンタルヘルスの不調を抱えるリスクが高いなどが挙げられている。

■スウェーデンでは夜勤時間によって週所定労働時間を短縮
2つめの視点は、夜勤時間数に応じた法定労働時間の短縮になる。ワークライフバランスを重視する一方、夜勤離れが加速している。そのため、夜勤する看護職員に偏りが生じている。
同協会の調査では、一般病棟に勤務する看護職員が月に72時間以上夜勤する割合は33.9%と3割を超えている。スウェーデンでは、フルタイムに占める夜勤時間の割合が2割だと約2時間、3割だと約4時間、週所定労働時間が短縮される。淺香常任理事は「夜勤交代勤務は看護特有の働き方」としたうえで、その負荷を軽減する労働基準法改正に向けた検討の必要性を訴える。
2026年度診療報酬改定では、ベースアップ評価料等による収入を夜勤手当の増額に充当できることが明示された他、急性期総合体制加算、看護職員夜間配置に関連する加算について、夜勤負担軽減に関する事項が要件に盛り込まれており、同協会としても一定の処遇改善につながると評価は高い。そのうえで、同協会が重点事業に掲げる取組みのひとつ「多様で柔軟な働き方の導入促進」が不可欠だと考えている。看護職は固定的・定型的な働き方にならざるを得ない点は否めないが、愛知県看護協会では「スポットナース支援事業」として、1日単位、時間単位で求人を募集し、医療機関に求職者を無料で紹介する事業を昨年から開始。結婚や出産などを契機に退職した潜在看護師と医療機関とのマッチングを進めている。
淺香常任理事は、「組織変革、意識改革、各種制度など、まだまだ課題は多いが、今まさに転換期に来ている」とし、「組織の理解のもと、潜在看護師の掘り起こしも進めていくべき」と語る。
要望書を受け取った岸本武史労働基準局長は、勤務間インターバルについて「インターバル確保に向けた支援金を出すなど導入支援に力を入れていくところ。義務化するのか、支援策で進めていくのかは論点の一つであり、要望の内容も踏まえて議論していく」との考えを示したという。
(フェイズ・スリー 2026年6月号掲載)
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