日本薬剤師会の岩月進会長は6月11日に行った定例会見で、先ごろ公表した令和7年度「保険調剤の動向」で処方箋枚数が前年割れしたことについてコメントし、まず「日本の全産業が人口減少の波を受けている」とするとともに、売上=客数×客単価という方式を自由に設定できる業界は客数減少を客単価の上昇で一定程度カバーできるのに対し、薬局は価格転嫁はできないため「客数の減少はイコール売上の減少に直結している」との立場を訴えた。
その上で処方箋枚数の減少=調剤市場の縮小という局面を迎えたことに対して、「ありていに言ってしまうと人口減少だから、収拾・撤退作戦を地域ごとに考えなければならない」と語り、それには日薬が進める地域医薬品供給体制の構築が必要と強調し、「いよいよ今、『用意ドン』で号砲が打たれた」と全国の薬剤師に向けて〝行動〟を促した。
令和7年度の保険調剤の動向によると、処方箋受取率(=医薬分業率)は対前年度比0.1ポイント増と、ほぼ横這いの82.2%に留まり、処方箋枚数は0.8%減の8億5730万枚とマイナスを記録した。特殊要因のコロナ禍を除き、処方箋枚数が前年度を下回るのは初めてとなる。
件数は0%増と完全な横這いの7億2818万件で、調剤金額は3.5%増の8兆3117億円だった。件数、枚数が伸び悩むなか、調剤金額だけが増加した。都道府県毎の分業率は80%以上が28県、70~80%が17県、60~70%が2県、60%未満が0県だった。この分布構成は前年24年度と全く変わっていない。
調剤金額については、5年前から遡れば21年度が3.1%増、22年度が1.6%増、23年度が6.0%増、24年度が1.3
%増で推移。過去の状況と比較しても、金額だけはまだ堅実な伸びをキープしている。一方、処方箋枚数は21年度が5.5%増、22年度3.7%増、23年度7.1%増、24年度0.9%増と、昨年度から急激にブレーキがかかっている。
処方箋枚数を県別に見ると、マイナス幅が大きかったのは北海道で2.8%減、続いて宮崎が2.5%減、山形2.0%減だった。主要都市では東京が0.6%減、愛知0.3%減、大阪0.4%減となっている。
処方箋の枚数は医療機関の外来患者数と密接に関連するが、厚生労働省は一昨年に「外来患者数は2025年にピークを迎え、既に減少局面にある医療圏もある」とし、328の二次医療圏中224地域でピークアウトが推定されるとの分析を示しており、こうした医療機関側の状況が影響しているとみられる。
岩月会長は外来患者数の減少とともに「処方日数の伸び」、つまり長期処方の増加も処方箋枚数減の背景に指摘。ただ、そうした実態も地域で差が生じているとし、「地域の実情を鑑みながら対応をしていく」とする地域医薬品提供体制の構築を唱えた。
具体的には支部薬剤師会に属す薬局・薬剤師が周辺地域の状況や同業者の動向、医療機関、高齢者数などを確認し、「今後どうしていくのが良いのか」を考えるとともに、「うまくいかなければ都道府県薬剤師会が手を差し伸べ、それでもダメなら日本薬剤師会が厚労省と共有してどうするか。(組織が)三層構造、三段構えになっている。(取組む)順番が下から順」と解説し、それぞれの役割を説いた。
加えて岩月会長は三層構造を取るのは三師会と行政機関だけとも指摘するとともに、行政は平成の大合併で市区町村を集約し、人口減少に対応してきたと振り返り、薬剤師会は集約できないものの、「地域で主体的になってどうしたらいいか、まず話し合う機会を作る。それが地域医薬品体制であり地域医療計画」とした。
また、原口亨副会長は処方箋枚数の減少に伴う市場縮小との見方に対し、「衰退なんて感覚はまったくない」と断言。「我々からすると『成熟期』を超えた『再成長期』で、今まで手を付けられなかったところに手を付けられる余裕が出ているという認識」と述べ、「薬局が衰退しているなんて発想はまったくない」と重ねて直言した。
(薬局新聞社)