外来は統合・大規模化、報酬は「包括払い」に

トリレンマ克服へアクセス・負担のバランス重視を

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財務省・財政制度等審議会の「春の建議」に向けた議論では、深刻化する人手不足を背景に、診療所の統合・大規模化と外来報酬の包括払い転換などの医療提供体制の抜本的な構造改革を求めている。医療法人の経営情報データベースの拡充や業務範囲拡大の考えも示している。
■なぜ構造転換が必要?
●医療・介護は付加価値増も労働生産性は低下
財政制度等審議会のこれまでの議論では、我が国が直面する最大の課題として「労働供給制約(人手不足)」が正面に掲げられた。財務省は、医療・介護分野(保健衛生・社会事業)は実質付加価値を増やしてきた一方、それを大きく上回る勢いで労働投入量を拡大させており、過去30年間で労働生産性が低下してきたとのデータを提示。製造業が1994年から2024年の間に労働投入量を減らしながら労働生産性を90%超向上させたのとは対照的に、保健衛生・社会事業は労働投入量が急拡大したにもかかわらず、労働生産性はむしろ低下している。こうした対比を根拠に、同産業の構造転換が『不可欠』と訴えている(図表1)。
従来、財務省の社会保障論は現役世代の保険料負担を抑える歳出抑制が中心だったが、今回はマクロ経済がデフレから物価・賃金上昇局面へ移行したことを踏まえ、「供給力を強化する構造改革」へ軸足を移している。多くの人材を囲い込む労働集中型の構造は維持できないとし、限られた資源で質を維持・向上させる業界構造への転換を強く迫っている。

■トリレンマとは?
●医療の質、アクセス、負担抑制の同時達成は困難
改革の視座として「医療政策のトリレンマ」を明示した。医療提供の負担抑制(Cost)、医療の質の確保(Quality)、患者アクセスの保障(Access)の同時達成は「極めて困難」とした上で、これまで質の向上とアクセスの確保を重視してきたが、高齢化・人口減少・医療の高度化が進むなか、公費・保険料負担抑制の観点から「従来の枠組みの維持には一定の制約がある」と指摘(図表2)。「特にAccessとCostの面でのバランス調整が重要」であり、効率的な提供体制の構築などに不断に取り組むことの必要性を強調する。
具体策として示すのが、小規模分散した外来機能の「統合・大規模化」だ。全国で10万施設を超える診療所について、人口減少下で外来需要が減少していくことが明白にもかかわらず、開設が増加し続けている実態を問題視。1診療所当たりの平均従事者数は各職種1~2名程度にとどまり、受付・事務・IT・検査等の機能が施設ごとに散在することで投資が重複し、人材の効率的活用にも制約が生じていると主張する。
これには保険薬局も含まれる。26年度診療報酬改定で導入された都市部立地薬局(当面は新規参入薬局)への減算措置の効果を検証し、不十分な場合は「保険薬局の総量をコントロールする手法の導入も視野に入れて検討すべき」と踏み込む。
■どんな包括払い化を?
●アウトカム評価と包括化でインセンティブ構造へ
医療提供の効率化を支える報酬体系の構築に向けては、現在の診療報酬体系がストラクチャー・プロセス評価を基礎とし、出来高払い中心となっているため、個々の医療機関では手厚い人員配置の下、より多くの医療を提供することが合理的な選択となっていることを指摘。「26年度改定で導入された配置基準の柔軟化は一定の変化の兆し」としつつ、「量の競争による過剰な診療行為や検査を誘発しかねない診療報酬体系の構造的課題は残されたまま」との懸念を示す。アウトカム評価を中心に据えた上で報酬の包括払い化を進めることで、医療の質を確保しつつ、できるだけ少ない人員で医療を提供することを適切に評価する報酬体系に転換すべきと訴える(図表3)。
特に慢性疾患へのケアでは、検査や受診の回数などの医療提供の量ではなく、「患者のQOLの維持・向上というアウトカムでの評価こそが望ましい」と主張。地域の医療資源を有効活用しつつ、病院・診療所・薬局の連携の下で患者を適時適切にフォローする体制を総合的に評価する観点からは「包括払い」が合理的であり、外来報酬体系の包括払い化の重要性にも言及している。
■新たな主張は?
●条件付き収益事業解禁、窓口業務コスト自費化も
従来からの継続的な主張では、経営実態の「見える化」の徹底を求める。医療法人の経営情報データベースについて、現在任意とされている職種別の給与・人数の報告義務化は「必須」と明言。診療所の費用構造で実態が不明な「その他の医業費用」の細分化や、同族取引など経営上特別な利害関係にある法人との取引額の把握も必要としている。
一方、新たな主張には、経営基盤強化の観点からの「医療法人の業務範囲拡大」がある。持分なし法人を前提とした上で、条件付きでの収益事業解禁などを例示している。
通常診療における「窓口業務コストの保険給付外サービス化(自費化)」にも触れている。26年度改定でオンライン診療のシステム利用料や、予約に基づく診察の患者都合によるキャンセル料の徴収が明確化されたことを受け、「通常診療における窓口業務(受付・患者管理・会計等)のコストも初・再診料による評価から切り離し、保険給付外サービスとして患者に直接請求できるようにすべき」とする。窓口業務は診療行為そのものではなく、本来、診療報酬で評価される必然性はないとのロジックだ。
(本稿は2026年5月31日時点の情報に基づき執筆したものです。6月に取りまとめ予定の春の建議について、公表前の審議経過を基に構成しているため、実際の建議の表現や詳細と一部異なる場合があります。)
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